PROFILE

ブラジルを代表するシェフであり、食とそれをとりまく環境の専門家。アマゾンの先住民の文化や暮らしを尊重しながら、その食材を発掘し料理を通じて世界に紹介し、ブラジルの食の未来を持続可能な形で牽引していこうとしているアレックスシェフ。その活動はいちレストランという枠を超え、ブラジルの社会と環境にまで広がり、また世界中の食に関わる人々に影響を与えている。

ミシュラン2つ星レストラン「D.O.M.」のオーナーシェフとして、ブラジルの豊かな自然と土着文化に根付く食材の多様性と可能性を余すところなく表現した革新的な料理で世界的に知られているアレックス・アタラシェフ。
彼は、世界最大の生物多様性を持つアマゾンや、ブラジルの奥地などあらゆる地を踏査し、様々な先住民生活に入り込みながらブラジル人でさえ知らない食材や伝統料理を発掘してきた。そうして集めたブラジル固有の食材の豊かな味わいと香りをモダンな料理に仕立てた。今までどこにも存在しなかったその料理は、世界で評判を呼び、現代の南米料理界に光を当てたパイオニアと言える。

アレックスシェフは、17歳の頃にロック音楽への興味からヨーロッパ各国に渡った。そこからベルギーの料理学校に入学。卒業後はベルギーのミシュラン3つ星ブリュノー（Bruneau）、フランスのベルナール・ロワゾー（Bernard Loiseau）で経験を積む。その後イタリアを経て、本国に戻りブラジルの地中海料理レストラン「フィロメナ（Filomena）」でシェフを務める。そして、1999年サンパウロに自身のレストラン「D.O.M.」をオープン。ブラジルのアクセントを持ったオリジナリティ溢れる現代的な料理が評判を呼び、世界をあっと驚かせた。



ブラジルの食材、色、味を追求したアレックスシェフの仕事は、食の専門家の目を引きつけ、様々な国内および国際的な賞を受賞してきた。2013年には、TIME Magazineの世界で100人の最も影響力のある人々に選ばれており、その表紙を飾った。また、サンペリグリノのWorld's 50 Best Restaurantに過去12年間掲載されている。2014年にはLatin America's 50 Best RestaurantsでLifetime Achievement Diners Club賞を受賞した。また、2016年にはアレックスシェフは、Netflixの大人気ドキュメンタリーシリーズ、Chef's Tableのシーズン2でも紹介された。

アレックスシェフは食材の探求の中で、自然を守り、そこに生活する人を守り、食の連鎖を守ることの重要性を痛感し、2013年に写真家や、人類学者、ジャーナリストなどで構成する学際的なチームを集めたアタ・インスティテュートを設立。アマゾンだけでも200を超える部族が存在しており、アタ・インスティテュートを通じてその多様な文化と食材を調査し、情報を取りまとめる活動を行っている。またアマゾンやブラジル大西洋林などのブラジルのバイオームから地域の食材を街の人々に販売、自然と共に暮らす人々の生活を守っていくサイクル作りに取り組んでいる。

2018年には、国際セミナーFRUTOでイベントを開催し、持続可能性、科学、美食、産業の分野で最も重要な30人が集まり、2030年までに86億人に達する可能性のある世界の人口に質の高い食料を届ける方法に関する代替案などを議論した。また2021年には、サンパウロのJardins地区にオープンするホテルに「D.O.M」を移転予定。ブラジルデザインの家具を使い、ブラジルの音楽を流しブラジルの文化を体験するという「D.O.M.」のコンセプトをホテルにも拡大する。

受賞歴（抜粋）
2019　The World's 50 Best Restaurants　54位
2018　The World's 50 Best Restaurants　30位
　　Latin America's 50 Best Restaurants 5位
2015　ミシュラン2つ星獲得　「D.O.M.」
2014　Latin America's 50 Best RestaurantsでLifetime Achievement Diners Club賞を受賞
2013　TIME Magazineの世界で100人の最も影響力のある人々に選出